俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい


仕事を終え、ほぼ時間通りに彼の部屋に着いた。黒いドアの前に立ってインターホンを押し、これから申しつけられる用事をあれこれ予想しながら待つ。

しばらくしてガチャリとドアが開けられ、まだワイシャツ姿の彼が現れた。ネクタイと首元のボタンは外されていて、そのセクシーなラフさにドキッとする。


「お疲れ。悪いな、急に呼び出して」

「いえ、今日は働きたい気分だったので」


私が苦笑混じりにこう言う理由を、鋭い不破さんはきっとわかっているだろう。やや含みのある笑みを浮かべ、私を中へと促した。

彼のあとに続いてキッチンに近づくにつれ、食欲をそそるバターやガーリックのような香りが鼻をかすめ、お腹の虫が小さく鳴く。夕飯の準備をしていたのだろうか。


「すごくいい匂いがしますね。お料理中でした、か……」


言いながらダイニングテーブルに目を向けた私は、目と口をあんぐりと開いた。

色鮮やかなテリーヌやサーモンが品良く盛りつけられた一皿や、ローストビーフやソテーなどの美味しそうで豪華な料理が並べられていたから。まるで、フレンチレストランのひと足早いクリスマスディナーだ。