しかし、愛車に乗せてもらうのはあのときが初めてだったから、なんとも言えない緊張感があった。

あのときも今も、本当の恋人として彼のそばにいられたらどれだけいいか。

密かにそんな邪念を抱きつつ車を降り、レストランの入り口に向かう。すると、先に入ろうとしていた男女のうち、女性のほうに目がいった。

緩いウェーブを描くセミロングの髪、ベージュのコートにミモレ丈のスカート。その姿が桃花によく似ているな……と思い、注視していたら偶然横顔が見えた。

やっぱり桃花だ。今日は夜勤明けだから出かけていたって不思議じゃないけれど、ふたりでここに来るような関係の男の人がいたの!?

驚きのあまり、「桃花!」と声を上げた。隣にいる不破さんも、彼女もこちらを振り向く。ついでに、彼女と手を繋いでいる男性も。

彼の顔が向けられた瞬間、胸の奥でドクンと重い音が響き、私の表情も身体も強張る。その人は、四年前に別れた元カレだったから──。


「麗っ!?」


ぱっと手を離した桃花は、驚きと戸惑いが混ざった顔で若干うろたえ、颯太は私と同じく表情を硬くした。