「よくそんなことまでわかるね」

「毎日見てますから」


日々、彼の行動や機嫌に気を配ってお世話をしていれば、ちょっとした変化には気がつく。よく見ていることの理由に、ここ最近は若干私情が混ざっていることは内緒だが。


「どうすれば、もっと元気になれますか?」


私にできることは寝顔を見せることだけじゃないはずだ、とリベンジしたい気持ちで言った。

不破さんの表情に、真剣さが帯びていく。前髪がかかる瞳にも男らしさを感じてドキリとした、そのときだ。


「じゃあ、こうさせて」


彼の右手が背中に回され、そっと抱き寄せられて、私は目を見開いた。

柔らかな髪の毛が頬をくすぐり、より一層強い彼の香りが流れ込んでくる。彼の体温を、逞しさを、初めて身体で感じる。

まさか、抱きしめられるとは思わなかった……! 頭の中がさっき以上のパニックに陥る。


「ちょ、ふ、不破さ……っ!」

「予想通り。お前を抱くと落ち着く」


耳元で吐息混じりに囁かれると同時に、さらにしっかりと抱きすくめられた。

こ、これもピーターを抱っこするのと同じような感覚なんだろうか、彼にとっては。こっちは全然落ち着かない!