「明後日、三時以降はなんの予定もなかったよな?」


恋というフィルターがかかったせいで、いたって普通に仕事をしている彼がまぶしく見えるものの、動揺せずにスケジュールを確認して答える。


「はい。年末にしては珍しく」

「野暮用ができたから、外出してそのまま直帰する。今回は俺ひとりで行くから」

「え……いいんですか?」


意外な言葉に、私はキョトンとした。

野暮用ってなんだろう。北海道出張に同行させられたくらいだから、どこへ行くにもお供するつもりでいたのに。

恋愛のことは一旦頭の隅に置き、小首を傾げて不破さんを見つめると、彼がいない間の私の仕事を申しつけられる。


「そのかわり、帰るの遅くなるからピーターのエサやっといてくれる? ついでに洗濯も」

「あ、えぇ。それは構いませんが、社長が不在なのにどうやって部屋に入れば……」


単純な疑問を口にした、そのときだ。おもむろに腰を上げた不破さんの手が、デスクの上に積まれている書類に当たり、窓側の床にバラまかれてしまった。


「わ、大丈夫ですか」


書類を拾おうと、反射的に身体が動く。一瞬、なんだかわざと落としたように感じたけれど、気のせいだろうか。