十二月中旬、頭上には今にも雪が舞いそうな白磁色の空が広がっている。

ここ東京の冬の寒さは、地元の新潟に比べればだいぶマシだけれど、今は身体よりも心が冷えきっていて寒い。

無意識に吐き出したため息が、同じ色の空に消えていく。


私、有咲 麗(ありさき れい)は、会社屋上の柵の上で両腕を組み、ビルがひしめき合った街並みを眺めながら、感傷に浸っている。

昨日、大切なものをひとつ失くして傷心中なのだ。ひとりでぼうっとしたいときによく来ているこの屋上に、今日もなんとなく上ってみたくなった。

冷たい空気が肌を刺し、心と同じ温度になっていくのを感じていると、私の後方にあるドアがギィッと開く音がした。

なにもないここに来る人はほとんどいない。今も昼休みとはいえ誰かが来るとは思わず、驚いてバッと振り返る。


「お、先客がいた」


独り言を漏らすその人物に、私は目を丸くして、「お疲れ様です……!」と挨拶した。