「『帰ったぞ』……。
ーーじゃないわぁ~ッ!このバカモンがぁ~ッ!!」

「うっせぇなぁ。
何怒ってんだよ、血圧上がるぞ」

怒鳴り声をあげながら座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、ヴァロンに詰め寄るマスターさん。
しかし、一方の彼は自分の手で耳を塞ぎ、つーんとした態度。

それを見てマスターさんは溜め息を吐くと、頭を抱えた。


「問題児じゃと分かっておったが、まさかここまで……。
三十路を過ぎても良い事と悪い事の分別もつかんとは……」

「三十路過ぎたとか言うな!
口を利けなくしてやろうか?ジジイ」

そんな光景を目の前にして、私は思わず苦笑い。

ヴァロン、口悪すぎ。
ほんと、”バロン”の時とは違い過ぎて驚きの連続だ。
けれど、互いに飾らず言いたい事を言い合う二人の関係性には何処か癒される。


この場に来て、すっかり気分が和んでいた私。
でも、マスターさんの言葉に改めて今の状況を思い出す。