顔を真っ赤にして声にならない気持ちに口をパクパクしていると、彼はそんな私を見てプッと吹き出す。


「ククッ、おもしれぇ女!
へ、変な顔すんなよっ……。金魚みてぇ!」

「なっ!ひ、ひどいッ……!」

”バロン”の時とは大違いの暴言に、グサッと傷付いた。
意地悪だし、なんかずっとからかわれてるみたい。

彼の言葉も態度も、私が思い描いていた”恋人達”や”付き合う”のイメージと違いすぎて悪い疑問が浮かぶ。


本当に私の事、好き、なのかな?

よく思い返したら「好き」なんて言われてない。


もしかして、私が思ってる気持ちとは違うのかな?

ヴァロンはモテそうだし、女の子に慣れてそうだし……。
私はその内の一人、とか?

色々考えいたら、なんだか不安になって涙が出そうだ。
潤んだ瞳を見られたくなくて俯くと、ヴァロンはパッと私から手を放した。


「わ、悪い……。泣くなよ……っ」

気まずい沈黙。
そのうち彼は、私から目を逸らして海の方を見てしまった。