言葉にならない叫びが、涙となって溢れた時だった。


「……シュウ。ちょっと待った」

書類を書くシュウさんの筆を止める、静かだけどビシッとした声。

ずっと黙っていたヴァロンが、口を開いた。


「はい?ヴァロン、何でしょう?」

「俺達の仕事は、報酬金を受け取った時点で依頼完了。……だよな?」

ヴァロンの声に、私も思わず彼を見ていた。

話しながらカートに歩み寄った彼は、積まれた札束の一冊を手に取り、パラパラとめくる。


「ですね。
そのお金を受け取り、領収書と依頼完了書を作成すれば……。今回の仕事は終了です」

問い掛けに笑顔で答える、シュウさん。
その答えを聞いて「ふ〜ん」と頷く、ヴァロン。


この時。
二人のやり取りを見ていた私は、馬鹿な事にすっかり忘れていたの。

昔も、召使いの時も……。
彼が、私を不幸にした事なんて、一度もなかった事をーー。