「僕はたくさん、アカリから貰ったよ。抱えきれない程の大切なもの。
僕の方こそ、アカリが生まれてきてくれた事に感謝する。
本当に、ありがとう!」
目を細めたバロンが、猫のように私の手に自分の頬を擦り寄せる。
トクンッと、鼓動が跳ねて……。
まるでこの世に居るのが、私達が二人だけのように思えて……。
一瞬、目の前のバロンしか見えなくなった。
「……ねぇ。
私がここから連れ去って、って言ったら……。
貴方は、どうする?」
気付いたら、私はそう、彼に呟いていた。
神様。
彼を、幸せにしてあげたいと思う事は……。
ダメですか?
そう、心の中で問い掛けた。
ザザァ……ッと、静かに波の音が響く砂浜。
答えは、すぐに出た。
ーーううん。
最初から、分かっていた。
私が彼を幸せに出来る方法は、たった一つしかない。
バロンを、私の元から自由にしてあげる事。
それだけ、だ……。



