「アカリが、初めて僕にチューした日!」

「!……へ?」

「……したでしょ?
アカリが海で助けてくれた時」

固まる私に、バロンは自分の唇をトントンと人差し指で叩きながら、ニッと口角を上げて見つめてくる。

すると、私の中であの時の光景が甦ってきた。
海で倒れていたバロンに、人工呼吸して助けた時の事が……。


「!っ~~~。
あ、あれは!っ……だって、仕方なッ……」

「し~っ!もう夜遅いから静かにして下さ~い。
ほら、リディアも起きちゃうよ?」

真っ赤になりながら弁解しようとしたが、バロンはベッドの脇で丸くなって寝ているリディアを見ながら私に注意をする。


「っ……もうっ」

「自分から話題を振ったクセに!」と、頬を膨らませて、プイッとそっぽを向いて、掛け布団を頭まで被った。


ーー少しして、気付く。

いつの間にか強張っていた気持ちが解けて、溢れそうだった涙も、引いている事に。