「覚えていますか?私が貴女の召使いになった日の事。
たくさん、約束しましたよね?」
「え……?」
見上げる私に、バロンは長い指を一つずつ折りながら……。あの時の約束を復唱していく。
「たくさん我が儘をきく。
18歳になるまで、傍にいる。
二人の時は、敬語はなし。
約束の日まで、たくさん名前を呼んでほしい」
「……ふっ。
よく、覚えてるね」
彼の記憶力に驚きながらも嬉しくて。
ほんの少し恥ずかしい気持ちが込み上げて、私は思わず笑った。
鼻をすすりながら見つめると、再び瞳が交わったバロンが握っている手に力を込めて、自らの約束を復唱する。
「そして私は……。
貴女様の17歳を、必ず幸せにする。と、約束した」
それは、私にとってどんなプロポーズにも勝る誓いの言葉。
バロンは私が巻いてあげたマフラーの裾を片手で持つと、目を閉じてそれに優しく口付けた。
その仕草に、まるで自分がキスされたかのように身体が火照る。



