「?……ど、どうしたの?
バロン?……ねぇ、バロン?」

自分の気持ちを伝える事に必死だった私は、なぜ彼がこんな反応をするのか、最初分からなかったのだ。

両想いになれる事は、嬉しくて幸せな事ばかりではなく。
時に儚く、残酷な事だという事も……。


控えめにバロンの服の袖口を引くと、彼がゆっくりと私の方を見た。


「……。困る」

「え……?」

「……。
このままアカリを、あの場所に帰したくなくなる」


静かな空間の中。
ハッキリと聞こえたその言葉は、「好き」よりも、ずっとずっと深くて、重たくて……。

私の心に、染み渡った。


重なった私達の瞳。
もう、言葉なんて出てこなかった。

このまま何も考えずに……。
貴方の瞳だけ、見続けていたかった。


ーー悟ったよ。
私達が互いの気持ちを言い合っても、どんなに叫んでも、叶わない夢なんだって事。

そしてそれを口にしたら、余計に辛くなるんだと言う事を……。


私とバロン。
一緒に居られる時間は、あと半年を切っていた。

……
…………。