バロンがいくら細身と言っても、身長はおじいさんよりはるかに高い。
それを軽々持ち上げて、スタスタと歩けるおじいさん。
それに。
おじいさんがさっき言った言葉が、ふと私の頭に浮かぶ。
『うちの金バッジに勝っておきながら……』
……。
うちの、金バッジ?
まるで身内を表すかのような表現に、私が”まさか”と、思った瞬間。
おじいさんが歩みを止めて、片手で自分の帽子を外すと軽く頭を下げた。
「……迷惑をかけて悪かったのぅ、お嬢さん。
あやつの無礼は、最高責任者《マスター》であるワシが代わりに払おう。
それで許してもらえんかな?」
「!!……っ。
マ、マスター……さんっ?!」
夢の配達人をまとめるマスター。
まさかの突然の出会いに、嬉しさよりも衝撃が勝る。
力が抜けた私は、その場に尻餅を着いてしまった。