思考が、ほんの少し停止する。
けど、目の前ではこの勝負の最後が続いていた。
バロンが大男の額を軽く人差し指で押すと、すでに意識が朦朧としていた大男は崩れるように……。床にドサッと、倒れた。
ワアァァァーーーッ!!!!
と、店内に響いて揺れそうな程の、大きな歓声と拍手が上がる。
「……お嬢さんの言う通りじゃったな」
「!……え、っ……あ」
っ……か、った?
バロンが、勝った……んだ。
決着がついてもボーッとしていた私に向かって、おじいさんが笑顔で声を掛けてくれた。
何だか束の間、自分だけ時が止まっていたような感覚。
ハッと我に返って、すぐさま視線をバロンに向けると……。
「アカリ、勝ったよッ!」
私の方を見て、優しい表情の彼が、いつもと変わらない笑顔を見せてくれた。
「……。うんっ!」
そのバロンの笑顔を見た時。
彼に頷いて笑顔を返した時、私には分かった気がした。
バロンが、ヴァロンに見えた理由が……。



