……
………。

そして、いよいよ。
決着の瞬間が訪れた。


バロンが15杯目を空けた後。
15杯目のグラスを持つ大男の手が、止まった。

大男は正面のテーブルに腕をついていて、震える手でなんとか飲もうとするが……。
グラスを持つ手は、一向に口に届く気配はない。

ここまでくると賑やかだった観客達も静かになり、勝負の結末をじっと見ていた。


するとーー。


「……。
白金バッジが欲しい?」

フッと笑みを含んだ意地悪そうな声を響かせたバロンが、大男の震える手からグラスを取り上げて、そのお酒に自らが口をつける。

ゴクンッと喉を鳴らし、先に16杯目を、空けた。


「寝言は寝て言え。
お前じゃ、相手になんねぇよ?」

テーブルにグラスを置いたのと同時に、顔を少し傾けて、目を細めて色っぽい表情で笑うバロン。

その表情を見た時。
私の目には、確かに重なって見えたんだ。


「……。ヴァロン」

私の口から、自然と出た名前。

この、一瞬だけ。
私は彼を、ヴァロンだと思った。