「……。
彼氏を止めなくていいのかい?お嬢さん」
私の質問には答えず、おじいさんは質問を返してきた。
”彼氏”ーー。
いつもの私なら、そう聞かれたら真っ赤になって、慌ててた。
でも、何でだろう?
今日は冷静でいられて、私はすぐさま返事をしていた。
「残念ながら、彼氏じゃありません。
……。でも、私の大好きな人です」
おじいさんに微笑んで、その後に私は11杯目を飲み干したバロンを見つめた。
視線の先に立つ彼は、美しく輝いて映る。
彼はまだ、諦めてはいない。
それなのに、私が諦めてはしまうのはおかしい。
と、先程の問い掛けの答えが、私の心の中で決まった。
「勝つのは、彼です。
だって彼は私に嘘をついた事、ないんですよ?」
私にとって、バロンの言葉は魔法の言葉。
言った事を必ず実現させる、不思議な呪文。
「止めません。
止める必要、ないですから」
”僕を見てて”……。
私に出来る事は、バロンのその想いを見守る事。
貴方から、瞳を絶対に逸らさない。



