「ふ~ん。
なら、その勝負。僕が引き継いでいい?
僕が勝ったら……。僕の彼女の頼み、聞いてね?」

!……えっ?
い、今……なんて……っ。

”彼女”と言う言葉に真っ赤になる私の周りで、彼の発言を聞いていた客は歓声を上げる。


「お~!兄ちゃん言うね~!!」

「好きな女の為に勝負ってか~!!」

「ヒュ~ッ!兄ちゃんやっちまえ~!!」

騒ぎに集まってきた野次馬によって、すっかり湧き上がる現場。


分かってる。
これはきっと、バロンの作戦。

周りを盛り上げて味方に付けて、相手を勝負から逃げられないようにしてる。


……けど。
相手は仮にも金バッジの夢の配達人。
前回の誘拐事件の事もあり、不安が過ぎった。

もしもまた、バロンが怪我でもしたら?
もしもまた、我を忘れてしまったら?

その想いを口に出来ず、じっと見上げる私に、バロンは顔だけ向けると優しい視線を送ってくれる。