「……アカリ?夕べ、何かあった?」

「えっ?」

翌日。
テーブルを挟んで朝食を食べていると、私をじっと見つめていたバロンが言った。


「目、赤い。
もしかして、僕が先に寝てから何かあった?」

「そ、そうかな?
なんでもないよ?ちょっと、眠れなかっただけ」

鋭い言葉にドキッとする。
真向かいから向けられる視線から逃げるように少し俯いてパンを頬張っていると、彼が言葉を続けた。


「あ、もしかして……。
僕のイビキがうるさかった?」

「あ、そうそう!
バロン、疲れてたんじゃないっ?」

変に言い訳したら余計に怪しまれそう。
そう思ってたら、バロンが自ら話題を振ってくれたから助かった。


彼は何も悪くない。
それなのに気まずくて、顔を合わせられない。
上手く話せない。

せっかく昨日、楽しい雰囲気の中で商店街で買ったパンの味もよく分からない。


私は、なるべく平然を装ってた。