「しっかり掴まって。
舌噛まないように、歯を食いしばっててね」

手早い作業に「え?えっ?」と戸惑いつつ言われた通りにすると、バロンはそのままバルコニーの柵に足をかける。


まさかーー!!

その行動に、そう心の中で叫んだ時には……。
もう彼は、近くの木に向かって跳んでいた。

でも、フワッとしたのは一瞬。
木の太い枝に、掴まって降りて、掴まって降りて、を繰り返したバロンは……。


「……はいっ、地面に着いた」

ゆっくりと私を背中から降ろして、「ベッ」と舌を出して微笑ってた。


……。
う、嘘でしょ?

信じられない出来事に、私は唖然。

当然だろう。
自分を背負って跳んだだけでもすごいのに、彼は木をつたって、地面まで降りたのだ。


更に驚いたのはそんな危険な最中で、私はちっとも恐怖を感じなかった事。