「……じゃあ。
お言葉に甘えて、休暇を頂きます。お嬢様」

言葉を詰まらせている私に、バロンはワザとらしい位に丁寧に深々と一礼すると、スッと横を通り過ぎて行く。

背後から聴こえる静かな足音が、徐々に遠のいて行く気配。
振り返って呼び止めたいのに、混乱して身体が動かなかった。


怒った?
今のって、バロン……怒ってたのかな?

ーーえっ?ええっ?!
なんで、こうなっちゃうのっ……??


私はこの時の、バロンの心境を知らなくて……。
彼を意識してしまう自分の気持ちに戸惑ってしまって……。

バロンを知りたい。近付きたいと思いながら、上手く伝える事が出来なくなってしまった。


初めての恋に戸惑う、17歳の夏。
ただ好きでいる事が、こんなにも難しい事だと知った。