それだけで、充分。
今までの事なんて、どうでも良くなってしまうくらい嬉しかった。

彼女が攫われた事を早く伝えてくれたから……。私は、今こうして無事に帰って来られたんだ。


「……また、会えますよね?
今度はいっぱい、お話したいです!」

「……。貴女には、敵いませんわ」

「え?」

「いえ、なんでも!」

ようやく微笑ってくれたモニカ様が、私に向かって手を差し出した。
その手を笑顔で握り返すと、彼女はグイッと引き寄せて私の耳元で囁く。


「……その時は、ぜひ聞かせて下さいませ。
アカリ様とバロンの進展を、ねっ?」

「!っ……えッ?」

一瞬何を言われたのか分からず茫然とする私に、パチッとウインクするモニカ様。

その直後に意味を理解し、ボッと真っ赤になる私を見て彼女はフフッと笑うと、サッと馬車に乗り込んだ。


嵐のような数日間の終わりを告げる、馬車の音ーー。

走り去る馬車を、私は暫く見つめていた。

……
…………。