無事に帰れるのだと安心していた矢先ーー。
いつの間にか、倒れていたはずのリーダーが意識を取り戻していた。
バロンの血で濡れたナイフを手に、私達をニヤニヤと見つめている。
「っ……ごめん、アカリ。
油断してた。怪我、ない?」
「わ、私は平気だよッ!
でもっ……。でもッ、バロンがっ……ッ」
「……僕も平気。
ちょっとかすっただけだよ」
……嘘、だ。痛いはずだ。
彼の傷付いた二の腕から溢れる血は、押さえている左手の間から流れ落ち、白いシャツも赤く染めていく。
そんな時でも、彼は背中で守りながら気遣ってくれる。
身体が冷たくなって、情けないくらいにガタガタと震える私に、バロンは顔だけこっちに向けて微笑んでくれた。
ーーえっ?
見た瞬間、ハッと心が鎮まる。
その表情が、私に幼い記憶を思い出させるの。
怪我の痛みを堪えながら、私を安心させようとするその姿が……。
一瞬バロンが、ヴァロンに見えた。