リーダーが、私を襲おうとしたからーー。


私を連れ去ったくらいなら、きっとバロンはここまで怒ったりしなかっただろう。

彼が冷静さを失うくらい我を忘れているのは、リーダーが私を必要以上に傷付けようとしたからなのだ。

全ては、私を想ってくれてるから故の行動。


「っ……」

バロンの心の内の感情に気付いて、ドキンッと跳ねる心臓。


ーー嬉しい。

バロンが羽織らせてくれた上着を掴む手に、思わず力が込もった。

彼の気持ちが忠誠心なのか、それとももっと深いものなのかは分からない。
でも、バロンが私を大切に想ってくれているのは紛れも無い事実だと分かる。


そして。
そんな彼の想いに、胸を高鳴らせている私がいた。

その偽りのない心が暖かく全身に沁み渡って、”このままじゃダメ!”と……。
さっきまで凍りついたようだった私を、動かすーー。


止めなきゃ!
このままじゃ、バロンが人殺しになっちゃうっ……!!


「……。
じゃあな……」

「っ……ダメッ!!」

リーダーの喉元を踏む足に力を込めようとするバロンの背に、私は咄嗟に飛び付いて止めていた。