自分の事だったら、我慢出来た。
私へのワガママだけなら、いくらでも許せた。

だけど、これだけは譲れない想いがあった。


「……ねっ?
いいでしょう?アカリ様」

「……ッ!!」

ーー我慢出来ないッ!!

私の手を握ったまま顔を覗き込むモニカ様の手を、感情のままに思いっ切り振り払った。


「っ……ふざけないでッ!
バロンはっ……物じゃないわッ!!」

散歩道に響く、怒りの叫び。

手を振り払われて驚くモニカ様。
その表情がハッキリと見えているのに、溢れ出した、私の爆発した感情はもう止まらない。


「バロンだけじゃない!
ローザも、他の使用人達だってそう!
みんなっ……。貴女のワガママや理想を満たす道具じゃないわッ!!」

ーー言ってしまった。
今まで生きてきた中でこんなに怒鳴り声を上げたのは、おそらく初めての事だろう。