「バロンを私に下さいませ」

「!っ……え?」

聞いた瞬間。
ザワッと寒気が走るのを、感じた。


今、『バロンを下さい』って、言った?


衝撃的な言葉。
信じられない言葉に、ただただ目を丸くして見つめている私に、モニカ様は話し続ける。


「私、ずっと探していたの。最高の召使いを!」

そう言う目の前の彼女は、まるでずっと欲しかった玩具などを見付けた時のようにはしゃいでいた。


「バロンは逸材よ。
文武両道で、何よりあの美しさ!
教育すれば、絶対に素敵な召使いになると思うの」


何を、言ってるのーー?

モニカ様の言っている事。
全てに理解が出来ない。


今のままで、バロンは十分素敵だ。

強さや、賢さや、美しさだけじゃない。
優しくて、一緒に微笑ってくれて、実は少し甘えっ子で……。

ーー傍に居てくれるだけで、私はあんなに暖かい気持ちになれるのに!!


最初はモニカ様の冷ややかな笑顔にゾクッとした心が、今度はフツフツと燃え出して熱くなるのを感じずにはいられない。