意を決して教室に入ると、樹くんの目線が動いた気がした。気にしないようにして教科書を探す。
目当てのものを見つけて教室を出ようとしたら、
「待ってよ」
呼び止められた。
「なに?」
クラスメイト。だから特別な感情はない。当たり前。
でも突き放すように冷たく返事をすると、樹くんは驚いたようだった。
「君、違うね」
「なにが?」
「他の奴らと違って、ちやほやしない。気持ち悪い感情ぶつけてこない」
「贅沢ね」
樹くんは毎日、いろんな人に話しかけられてうんざりしているみたいだった。でも、わたしには贅沢すぎる悩み。
少し、イラッとした。
「わたしなんて、待ってても誰も話してくれない。特に男子なんか見向きもしないんだから」
わたしの言葉に、樹くんはクスッと笑う。ちょっと失礼だ。



