教室に入ると、もうほとんどの人が来ていて、


「あ、歩和!おはよう!」


「奈月ちゃん!おはよう!」


奈月(なつき)ちゃんはすごく元気のいい女の子。


高校に入って初めてできたお友達。


自分の趣味も隠さず教えてくれて。


とても仲良いんだ。


「昨日どうだった?」


「あー。やっぱりダメだったよ(笑)」


奈月ちゃんには私の好きな人も教えた。


「やっぱりね。」


「でも、田嶋さんっていい噂しないよね。
先輩と二股してるとか。
もしかしたら、閑城くんが、本命じゃなくて、その先輩が本命じゃないかとか」


学校の中での紗渚さんはすごく美人で、優しくて、志人くん想いの人。


でも、その方裏で、悪い噂が出ている。


ホントかどうかはわからないけど、


「紗渚さんはそんなことしないよ」


そう、信じたかった。だって好きな人の好きな人だもん。


そう、信じたい。


「まぁ、今日の部活、歩和は顔出しづらいよね。」


「……あ!そうだった!完全に忘れてた!」


同じバスケ部だったこと忘れてた!


まぁ、私はマネージャーなんだけど


「頑張りなよ!歩和!」


「奈月ちゃーん!」


「HRはじめるぞー。」


「あ、やば先生きた。じゃあね!歩和!また後で!」


「うん!また後で!」


はぁ。憂鬱な1日が始まるのか…




何とか、午前の授業を終えてお昼休み。


「奈月ちゃん!食べよ!」


「うん!あ、今日歩和のお弁当美味しそう!いつもだけど(笑)」


「そんなことないよ!埋め合わせで作ってるだけで」


「それを上手く活用してるからこそ、料理上手なのよ」


「そうかな?」


ただの埋め合わせで作ったお弁当だから、そんなことないと思うけどな


「てか、あれ見てよ」


なんだろう。見たいけど見たくないような。


だってみんなの騒ぐ声や、主の声、聞こえてるから。


でも気になる!


「っ……!」


紗渚さんに見せるあの顔は、私の好きな顔。


照れた顔も、笑った顔も、すべて好きだ。


中学の時、同じクラスだった志人くんに恋をしてた。


その時はまだ紗渚さんとはお付き合いしてなくて。


志人くんに彼女ができるまで想い続けようって。


彼女ができたら諦めよう。

そう思ってた。


けど、現実は残酷で、私を簡単に諦めさせてくれない。


「いいよ。見てるだけ辛いし」


「まぁ、そうなんだけどさ。なんか、田嶋さん、悪い噂立ってから怪しく見えるんだよね」


そうかな?全然そんなことないと思うんだけど。