悠稀は確かにそう言った。


「な、なんで?」


悠稀には、何も伝えてない。

好きな人がいることも、その好きな人が志人くんだということも。


「お前見てたらわかった。お前、志人と田嶋見て泣きそうだった。」


そんなバレバレだったかな。


「なに?振られたの?」


「ゆ、悠稀は関係ないでしょ!!」


「じゃあ、なんで今も泣きそうなの?声震えてんの?図星だから?」


悠稀の言っていることが当たり過ぎて怖かった。


「俺の前ぐらい強がんなよ。お前、俺と何年の付き合いだよ。」


13年前、幼稚園入園式に向かう時、隣の家から出てくる悠稀と会った。


それからお母さん同士が仲良くなって、自然と私達も一緒にいた。


小中も、クラスが離れても、一緒に登校して一緒に下校した。


去年入学した高校だって、悠稀は頭が良いのに、頭が悪い私に合わせて同じ高校にしてくれた。


もちろん、高校は、お互い好きなところ行こうよ!って説得したんだけど、


「俺が違う高校行ったら、お前ぼっちじゃん。1人嫌だろ?」


って反論も言えない言葉を返されてしまった。


元々、私の父親は海外でお仕事をしているため、帰ってくるのは年に1、2回程度。


そしてお母さんは看護師として働いているため、帰ってくる時間が遅い。


小学校の時の友達は思春期のせいか、みんな中学生になってから離れてしまった。


遊ぶ友達もいないし、家の中にも誰もいない。


そんな時ずっと一緒にいてくれたのは、いつだって悠稀だった。


だから、私以上に私のことを知ってるのは悠稀だ。


私は悠稀のなんにも知らない。


これって幼なじみって言えるのかな…?




悠稀side

俺には大切な幼なじみがいる。


天然だし、勉強できないけど、人一倍努力するやつ。


俺は、小さい頃から歩和のそばにいて、歩和を支えていた。


寂しくならないように、泣かないように、1人にならないように。


でもやっぱり、親がいないのは寂しかったようで、たまに泣きそうな顔になる。


泣きなって言った時は我慢できなくて俺に抱きついて泣いてた。


「ねぇ、歩和。」


「なに?悠稀。」


「俺、歩和のこと絶対悲しませないから!一生守るから!」


小さい頃、俺が歩和に言った言葉。


歩和は覚えてるのかわからないけど、


俺は覚えてる。


あの時から、俺は歩和が好きなのに。


その歩和は今は志人を見てる。


恋愛って難しいのな。