まったく、単純で馬鹿な奴らだ。

秀一は、受話器を置きながら、苦笑した。


弟の勇次が愛した女、紅は、大麻の密売で逮捕されて、今は留置場の中にいる。
勇次は、紅と一緒になるのだと言って、この家を出て行った。


誰もが、これであの事件は終わったのだと、思っていた。
秀一を、除いて。


秀一の親が経営する三津田総合病院は、地元でも信頼されている大きな病院だ。
大麻を販売する組織にとっては、この上ない隠れ蓑になる。
たかが売人がひとりふたり逮捕されたところで、その裏にいる組織が手放すはずが、ない。