たらり。

背筋を冷や汗が伝い落ちた。

マンガによくある冷や汗の表現というのは、本当にそうなのだ、とわたしは実感した。

同時に、なぜか笑いが浮かんだ。

笑おうと思ったのではない。

ピンチに陥っているのに、自然に照れ笑いが浮かんできたのだ。

わたしはバッグを引っつかむと、笑いを顔に貼りつけたまま首をすくめて、無我夢中で店をとび出した。

「なによぅ、もう」

外に出たとたん、四方のやつ、と空想で浮かぶニキビ面をけっとばしてやりたくなった。四方は私を待たず、とっとと会社へ戻ったらしい。

ぷりぷり怒りながら、会社への道をたどる。

もう二度とあの店には行けないわ。

せっかくワンコインでそこそこのランチを食べられるお店だったのにな。

わたしは宙を仰いで、もう一度、

「四方のやつ」

と、呪詛の言葉を吐きだした。