ところがどうだろう。

突然、四方が、わーい、と歓声を上げ、両手をバンザイさせて、仕事部屋に向かって走りだした。

「友高さんが結婚してくれるぞおっ。おーい、みんなあ、ぼくと友高さんが、結婚することになりましたぁ」

「えっ? ちょっと、四方さん? 待って。違うんです」

わたしが呼びかけたときには、四方はもう部屋のドアをあけて、中へ飛びこんでいくところだった。

「おーい、みんなぁ、聞いてくれぇ。ぼくと友高さんが結婚しますぅ」

わたしは、きゃーっ、と悲鳴をあげて、彼を追いかけた。

「四方さーん、待ってぇ、違うのよぅ、待ってぇ」

入ってすぐのドキュメント課では、森さんと、目を覚ました小湊課長が、目をまん丸にして、わたしと四方を見比べている。

四方はもうとなりの総務課へ走っていっている。

「違うのよぅ、違うのよぅ」

わたしは激しく首を横にふりながら彼を追う。髪がバサバサに乱れていくのがわかる。他人が見たら、鬼女かと思うだろう。