ここはどうしても、しっかりと答えなければいけない。

わたしは川中さんのこれまでのことを、猛スピードで思い浮かべた。

彼女が私たちの部署に異動になってきたのは2年前。経理部からはじき出されてきたのだった。

仕事ははっきり言って、のろい。本人はそれなりにまじめにやっているつもりだけれど。

川中さんがいなくなっても、別の人が来てくれれば、仕事にはまったく影響しないかもしれない。

でも。

わたしは考える。

それでも……。

わたしはどういうことを望んでいるだろうか?

1秒の何分の1かの瞬きするほどの時間で、わたしは頭が焦げ付きそうなほどに集中して考えた。

そして、

「バカね」

と、真剣に答えた。「大事な仲間に、そう簡単にやめられたら困るわ」

川中さんが鼻をすすりあげた。

「はい……がんばります」

泣きながら、わたしにおじぎすると、今度こそ向きを変え、化粧室へ向かった。