疲れたように足をひきずり気味にして去っていくうしろ姿を見送って、ふり返ると、前方の廊下に、不気味な白い影がヌッと現れて、ぎょっとした。

「ひっ」

思わず息を呑んで、立ちすくんだ。

でも、よく見ると、それは幽霊などではなく、人間だった。

白地に薄いピンクの花柄模様を散らしたワンピースと、その上にクリーム色のカーディガンを着た、細身の若い女性。

服装から言って、本当なら華やかな感じがするはずなのに、周囲の薄暗さに負けないほどの陰気なオーラをまとって見えるのは、その女性が泣いているからだ。

ファンデーションも、アイシャドウも、チークも、みな涙で流れて、本当にお化けのような顔をして立っているのは、

「川中さん……」

彼女だった。