「この方法の欠点は、標準部分とオプション部分の文章のバランスが、少々不自然になりがち、ということなんですけど」

「いや、かまわないよ。マニュアルを使うのは、工場の作業者なんだ。一般家庭の主婦というわけじゃない。気にしないと思う」

「なにより、時間がないですから」

と、成宮課長も、四方も、賛同してくれた。

実際に文面を作成する役割分担としては、成宮課長、四方、わたしの3人が口述し、森さんがそれらをパソコンに高速にインプットする、ということにした。

まず、成宮課長が概略的なことをしゃべる。

それを、四方が機械の作業者にわかるようにくわしく説明する。

さらにそれを、わたしがマニュアル用の文章にリライトするようにしゃべる。

といった具合だ。

3人がしゃべったことは、森さんの手で、3つの独立したウィンドウにインプットされていく。しゃべるのとほとんと同時に、40インチのディスプレイに言葉が表示されていく。

図が必要なときは、すばやく引っ張ってきて表示される。

わたしが手で位置や大きさを指示すると、画面上で図が移動され、縮小され、トリミングされる。まるで、自分の指が魔法使いの指にでもなったかのような気分だった。