玄海部長は続けて言った。

「成宮さんはこれで管理職になりました。たった今から残業規制は受けません。しかし、むちゃな時間外勤務で健康を害することのないように、しっかりと自己管理をお願いいたします」

「はいっ」

成宮課長の辞令交付が終わると、玄海部長は高木部長に言った。

「それで……高木さんには今、部長兼課長ということでやってもらっています。本来であれば、成宮さんが課長に昇進したのと同時に、高木さんの課長職を解いて、部長専任ということになるわけですが、今日は、何分にも急な話でしたのでね。高木さんについては、予定通り来週に、他のかたの辞令といっしょに発令することになります。そこはご理解ください」

「わかりました」

高木部長が了承すると、辞令についての話はそれでおしまいになった。

組合の古太刀委員長は、もう用がないと言わんばかりに、そくさくと仕事場から出ていった。

玄海部長は高木部長とともに、わたしたちに背を向けて、低い声で立ち話を始めた。「営業」とか「諸橋」という語句が、ときどき漏れて聞こえた。ふたりとも、かなりきびしい表情をしている。