「諸橋なんでしょ? やっぱり」

「はあ……その通りです」

わたしの答えを聞いた成宮係長は顔をしかめ、また舌打ちして、高木部長と顔を見合わせた。

目と目で、やっぱりあの野郎か、と会話しているのがわかる。

ふーん、小湊課長が言っていた通り、社内の問題児らしい。

その小湊課長が口をそえる。

「確かに、営業が困ったことをしてくれたわけですが、お客様に非はありません。なんとか、この仕事を仕上げませんと」

「そうだよなぁ」

高木部長は頭の後ろで手を組み、椅子の背もたれに寄りかかって、考えごとをした。

ややあって、いいことを思いついたという顔で、

「よし、四方君を呼ぼうよ」

と、言った。

「あっ、なるほど。そうですねぇ」

成宮係長も即座に同意した。

高木部長がすぐにデスクの電話に手をのばし、四方に来てくれるようにと、話し始めた。

意外なところで四方の名前が出てきて、わたしは面食らった。

わたしがぽかんとした顔をしていたためだろう、成宮係長が説明してくれた。

「品質保証部に、四方というのがいます。この機械の品質保証担当です。機械の納入にも立ち会っているし、だいたいのことは奴でわかりますから」