「あ」

そうか、と納得する。

わが社の設計屋さんたちは、みな納期に追われて、毎日遅くまで残業している。

成宮係長も、給与計算の締め日の今日で、すでに残業が40時間に達しているのだろう。うちの足立さんと同じだ。

そういう目で見ると、なるほど成宮係長の目の下にはクマができている。

小湊課長が提案する。

「あの、では、高木部長、成宮さんの残業延長を許可していただくわけにはいきませんでしょうか? まことに心苦しいのですが」

「いや、もうそのレベルじゃないですよ。役員決済で80時間、今月限りということで認めてもらったんです。それがもうイッパイイッパイ、いっちゃってるんで」

成宮係長が腹立たしげに言った。

「あー」

わたしは小湊課長と顔を見合わせた。

80時間を超える残業は、絶対に認めてもらえない。過労死を防止するために、社長の肝いりで決められた規則だからだ。

以前、こっそりと80時間を超える残業をし、翌月の残業代にオーバー分をつけ加えた社員がいた。

そいつは結局見つかって、上司ともども懲戒処分を受けた。

そのくらいきびしい規則だ。