泣きながら、ずい分なことを言われた。

カチンときた。

なによ、わたしみたいな生き方って。

まるでわたしが結婚願望のない、生涯独身の、バリバリのキャリアウーマンみたいじゃない。

冗談じゃない。外見からみんなに誤解されるけど、わたしだって寿退社して専業主婦になりたいわよ。

赤ん坊をあやしながら「パパ、今日も遅いでちゅねー。残業でちょーかねー」なんて言って、かわいいピンクのほっぺをツンツン。そんな生活がしたいわよ。バカヤロー!

わたしの殺気に気づいて、川中さんが一歩あとじさる。

こぶしをふり上げそうになるわたしの肩が、後ろからポンとたたかれた。

「まあまあまあ、友高くん」

また、「まあまあ」の小湊課長だ。

「用事があるんじゃしょうがないじゃないか」

「だって」

ふりかえりざまにギロリとにらみつけたが、小湊課長は慣れたもので、少しも動じない。

敵ながらアッパレ。

「残業を強制することはできないんだ。無理強いすれば、パワハラで訴えられる。特に最近はうるさくてね」