3月生まれの恋人



『なん・・・で?』



そこに立って微笑むのは、昨日あたしをそっと抱きしめた男性



『どおして・・?』



車の扉を片手で閉めた彼は、ゆっくりとこちらへと歩いて来て、あたしの前で歩みを止めた



『黙ってるつもりじゃなかったんだけど、君の事は前から知ってた』



驚きのあまり呆然と立ち竦むあたしに、彼が困ったように髪を掻く



『君は拓海のお気に入りだったし、隣に住んでるって解ったときは正直驚いたよ』



運動会で見かけた君が隣の扉から出てくるなんてさ・・・

上から注がれる視線に顔を上げると、昨日と同じ優しい瞳



『まいったよ、本当

一目惚れした甥っ子の先生が、うちの隣に倒れてるんだぜ?』



ほっとけないよ・・・

照れくさそうに口元を隠して、彼が言う



『拓海くんのお兄ちゃんだったの?』



不覚にも歪む、あたしの視界



『兄貴の子だから甥っ子だよ。

ま、例え甥でも渡す気はさらさら無いけどね』



ね・・・・



『二股男なんか止めて俺にしない?』



俺なら絶対泣かさないよ?
自信あるから。


微笑んで首を傾げる姿はちょっとだけ、拓海くんに似てる気がする



『あたし、振られたばっかだよ・・・』



『そいつ、絶対見る目ないから!』