3月生まれの恋人


恋人だと思っていた男の裏切りを目にした場所

息を殺してそっと彼を見上げると
目があった彼はニコリと微笑んであたしに手を伸ばした。



『行こう、早速』



差し伸べられた大きな手に一瞬見入る・・・

この手をとったら、あたしの心はどう動くのだろうって思った


安心なような・・・
怖いような・・・


でも、もう動き出した自分を止める術はない

差し出された手に、自分の手を伸ばす

指が触れた瞬間、彼の手がぱっとあたしの手を捉えた。



『行こう』



玄関の扉を開き、彼はあたしの手をとったまま歩き出す



『もし・・・』



何かを思い立ったかのように、彼が不意に立ち止まって言葉を続けた



『もし鍵が見つかっても、熱がちゃんと下がって元気になるまではウチにいて?』



心配だから・・・。


自分で言った癖に、口にしたはなから照れている
そんな不器用な横顔

俯いて小さく頷くと、彼はまた駅へと向かって歩き出した