3月生まれの恋人


次に目が覚めたとき、部屋に彼の姿は無かった。

夜中、すがりついて泣いたあたしをを
ひたすら撫でてくれた彼

腫れぼったい瞼を手で隠してそっとリビングの扉を開くと

テーブルの上にぽつんと、一枚の紙を見つけた

手にとって見ると、流麗な美しい文字が目に入る


“どうしても休めないので仕事に行ってきます。

鍵屋は呼ばなくていいから、ゆっくり休んでて。

夕方もし、熱が下がっていたら一緒に心当たりを探してみよう

柊”




・・・パタリ


一粒流れた涙が紙に落ちて、青い文字が滲んだ

この人って、どこまでお人好しなんだろう・・・と思った。


拾ったあたしを看病して、今度は一緒に鍵を探しに行こうなんて

今時正気の沙汰じゃない。

人に裏切られて傷付いて泣いて

今度は人に救われてほっとして泣く



『あたしってホントバカ・・・』



まだ顔の火照りが取れなくて、ふらりと足元が揺らぐ。

本当は、今一人でいるのは辛いってわかってる


“もう少しだけ、甘えてたい”


虫のいいあたしの本音。