3月生まれの恋人



『水瀬さん・・・

水瀬さん・・・?』



軽く揺すられてはっと目を覚ますと、薄茶色の瞳が心配気にあたしを見下ろしていた。



『あれ?あたし』



訳が分からず見回してみると、そこは、朝目覚めたベッドの中



『ソファーで休んでるのかと思ったら凄い熱で』


表情を曇らせてそう言う彼に体温計を突き付けられ、あたしは目を丸くした



『三十九度二分?嘘?』


『残念ながらホント』



読み違いではないらしく、液晶に表示された数字は何度見ても“39、2”。



『真冬にあれだけびしょ濡れじゃあ、ま、当然だろうけど。

それより、汗が半端じゃないから着替えろよ』



彼のものであろうパジャマをぐいっと押し付けられ

あたしはようやく自分の体の異常に気付いた。

洗って乾かされて居たはずの自分の服は、べっとりと体に纏わりつき

寒いのか暑いのかが全くもって判らない。



『この分じゃ、明日も起き上がれないかもな』



頭の下に敷かれた枕の中で氷がコロンと音をたてる。



『すみません、どうしよう、私』



よくよく考えてみると、彼は今日知ったばかりの、こよなく他人に等しい隣人

とんでもない迷惑をかけている自分に、気が遠くなる

自宅は隣なのだけど、鍵が無いものだから帰りたくとも帰れない・・・