『官能小説なら、私も嫌いじゃないけど』

 そして再び本を読み出す吉村。

 俺は訳がわからなかった。今までに無い反応。女の子って、こういう時『やだぁ! 大輝ってばぁ!』ってふざけて言ってきたり、『最低!』って顔を赤くしてきたりする生き物じゃないのかい?

 それなのにこの子の返答は『官能小説』。しかも好きだって……?

 え、え、え、何どういうこと……?

 しばらくしてから俺は気づいた。この子は俺たちよりも、ちょっとだけ大人。というよりは、ちょっと違う次元にいる。

 俺はどうやらからかわれたらしい。ひょうひょうとした吉村の手のひらの上で。……いや、ほんとにこの子官能小説読んでるかもしれないけどさ。

 だけど、何故か嫌な気はしなかったんだ。それどころか、もっと吉村の事を知ってみたいな、と思ったんだ。今までに無い種類の女の子は、俺にとってすごく新鮮だった。

 ――そしていつの間にか。

 俺は吉村のことしか、考えられなくなっていたんだ。