『ふぅん。じゃあどんなのが専門?』

『漫画とエロ本……』

 言った瞬間、しまったと思った。この子は俺といつも馬鹿話をしている女の事は違うんだ。

 エロなんて単語、恐らく最も嫌いとする種類の人種だろう。てゆーか意味がよくわからないかもしれない(さすがにそれは無いか)。

 “何言ってるのよ! この破廉恥!”(きっとハレンチも漢字で書けるんだ、この子は)と思っているに違いない。てゆーか絶対今ので俺軽蔑された。――あうあう。どうしよう。委員の任期は一年もあるのに。

 ――しかし。

 吉村は俺の瞳を、厚底眼鏡の奥からまっすぐと見つめた。数ミリはあると思われる眼鏡のガラスを通してでも、深い光を称えている漆黒の瞳。

 そして吉村は、口の端をわずかに上に上げ、不敵に笑った。俺は何故か、ドキりとした。

 何も言えずにしている俺に、吉村はこう言った。