当番の時間は三時半から五時半。果たして二時間も、俺はこの子と同じ空間にいることに耐えられるだろうか、って。

 当番初日は、俺の予想通りの事が起こった。俺が図書室に来ると、この子は必要最低限のことだけ喋ると、カウンターの椅子に座り、本を読み始めてしまった。隣の椅子に座る俺の存在など、気にも留めないようなそぶりです。

 その時は、しょうがないから本を読もうと思った。だから適当に側にあった棚から一冊取って開いたんだ。――だけど。

 撃沈。てゆーか読めない。振り仮名振ってくれ。てゆーか読む気がしない。文字を大きくしてくれ。漫画ねぇかな。

 椅子に座って本を開いた瞬間、無理だと悟って本を閉じ、本を戻すために再び棚へ向かおうとする俺に、吉村は不意に話しかけてきた。

 『読まないの?』、と。

 この子が自分から、しかもどうでもいい話をしてくると思わなかった俺は、一瞬戸惑ったが、いつもの調子でこう言った。

『ちょっと専門外だった』