だけど運動部の奴はそんなことできないから、部活をやっていない委員がそれを承るという掟もあった。

 毎日部活をするより、ゆるーく友達と公園で3on3やフットサルを楽しみたい俺は、今はどの部にも所属していない。――だから毎週水曜日に、その仕事を半ば強引にやらされることになった。

 本嫌いの俺にとって、図書室に来ることすら苦痛が伴うのに……その上。

 分厚い黒縁眼鏡、黒くて長い髪、暇さえあれば本の虫。毎週水曜日に、俺と同じように当番になった奴は、俺が今まで関わったことのないような人種の、女の子だった。

 図書室の前に辿り着くと、俺は重い扉を勢いよく開けた。

「おっす」

 そしてカウンターに座って本を読んでいる彼女に向けて、手を上げながら軽い口調で言う。彼女――吉村美沙は俺の方を見て口の端を僅かに上に上げると、再び本に視線を落とした。

 相変わらず、寂しい図書室だった。中央のテーブルに、調べものをしている一年生が、一人。後は誰の姿も見えない。ここはいつもこうだ。まあ、テスト前は少しだけにぎやかになるのだが。