「今日の欠席は、尾上だけだなー」



窓の外の雨を眺めながら“本格的に梅雨に入っちゃったなぁ……”なんて憂鬱な気持ちに浸っていた朝のホームルーム。


先生がまさかの言葉を口にした。



はるくんが……休み?



慌ててはるくんの席を確認する。


いつもなら、だるそうに頬杖をついていたり、眠そうに大あくびをしていたり。はたまた机に突っ伏して居眠りをしていたり。


そんなはるくんが座っている席は、今日はもぬけの殻。



はるくんは昔から、滅多に学校を休まない。


確か最後にはるくんが学校を休んだのは、中学に上がってすぐくらいだったと思う。


はるくんの親戚のおじさんが亡くなったとかで、遠いところまで行かなきゃならなかった時だった。



まさか、また何かあったのかな?


それとも……?



ふと、昨日の放課後の記憶が蘇ってくる。


結局あの後、私達はびしょ濡れで最寄りの駅についた。


私を雨から庇ってくれたはるくんは、私なんかよりずっとびしょ濡れになってしまって。


水滴がしたたるはるくんの顔をハンカチで拭いながら『風邪引いちゃうよ』と心配していると。



『俺は平気。結衣が風邪引かないかどうかのが心配』



と、自分の袖で私の顔の水滴を拭ってくれた。




その後すぐにビニール傘を購入したけど、服が乾くことはなく、びしょ濡れのまま家に帰ったから。