独りだったあーちゃんが、俺の兄を人生の伴侶に選んだ




新に言った言葉は建前なんかじゃないはずなのに、嬉しさと寂しさと諸々の想いで体の奥の方がチリチリとする





「じゃあ、ありすが待ってるから帰るわ」と二人分の会計をして出ていった新の後ろ姿を見送って、深く息を吐いた





しばらくテーブルの上のコーヒーのカップを眺めていたけど、樹のことを思い出し店を出た










婚約披露パーティーの会場に着くと既に当人達の挨拶は終わった後らしく、場内のあちらこちらで歓談が始まっていた





見渡すと学生時代の同級生など、見覚えのある顔も多くいる中、真ん中らへんに主役の姿を見つけた





近付いていくと樹は俺に気付き、「朔、久しぶり!」と声をかけてきた




「久しぶり。婚約おめでとう」




久々に会う旧友の肩に腕を回しながら、「いつの間にマドンナ落としたの」と耳元で囁く



樹の隣に立っている婚約者は高校の時から樹が想いを寄せていた学園のマドンナ




「手出すなよ?」とニヤニヤと笑う樹に心の中で謝る



すまん、マドンナは元カノだわ




「あ、そうそう」



樹から手を離しジャケットの内ポケットを探る