あの夏に見たあの町で



入ってきたのは40代半ばと思われるキッチリと身だしなみを整えた男性




「紹介する、SV(スーパーバイザー)の仁科くんだ」



男性が俺達の隣に並ぶの待って話し始める





「明日から最短で5年、長ければ10年以上...現場の全てを習得してこい」




俺達にそう言って、仁科さんへ目を向ける




「仁科くん、孫の朔とその相棒になる有沢悠貴だ。まだまだ若造で面倒をかけるが頼む」




おいおい俺達と話す時と全然態度が違うじゃねぇか




「かしこまりました」




綺麗なお辞儀をして、こちらに向き直り「SVの仁科一道です。よろしく」と笑顔を見せる




悠貴と「よろしくお願いします」と頭を下げる




「じゃあ明日、駅の改札前に7時に集合な。帰ってくるのは移動のタイミングくらいだから、荷物はオールシーズン用意してパスポートも忘れずにな」




重要なことをサラッと述べて、さっさと社長室から出ていってしまった







「なぁジジイ...明日からって急すぎない?」



唖然としてジジイに問うと「善は急げって言うだろ」としれっと吐く





ジジイめぇ





俺と悠貴は急いで帰り、明日からの準備をするハメになった





ジジイは自分がどう呼ばれようと、どう思われようと気にしないらしかった



ただ俺がばあちゃんと1回だけ喧嘩した時、俺に滅茶苦茶怒ったし、学校でクラスの奴と揉めてアザを作った時はそいつの家まで行き、そいつが消えちまうんじゃないかって程に追い込んだ




普段あまり喋らずに何考えてんのかも良くわからないけど、大切なものを想い守る姿は同じ男としてカッコいいと思ったのを覚えている




そんなジジイだから後継者になることも決心できた