あの夏に見たあの町で



ジジイが住む街に着いた頃には日は暮れていて、山は遠く煌びやかに光るネオンに星も見えなかった




そのまま田舎の総合病院とは比べ物にならない程に大きな病院に連れて行かれた





新しい病室で初めて会ったばあちゃんは、無言で俺を抱き締めて涙を流した






翌日には手術をして、傷口が塞がる頃にはジジイの家での暮らしが始まった




部屋がいくつもあって、初めの三日間は家の中で迷子になって、ばあちゃんが探しに来てくれた



三日間で自分の生活範囲だけは覚えて、それ以降は徐々に把握していった





傷口が塞がってからは、数年に渡るリハビリの日々




その間に地域でも有名な私立の小学校に入学した



名門大学までのエスカレーターだが、入るには莫大な金を積むか、超難関の入学試験を通るか...




当然前者だった俺はリハビリの日々と共に、毎日、家庭教師が来て猛烈な勉強をさせられた



中学に上がるまでに大学受験レベルまでの内容を叩き込まれ、更に、主要な外国語も日常会話レベルまで習得させられ、友達を作る時間すらない何ともつまらない6年間を過ごした




最初の頃は何度も逃げ出そうと思った




田舎に帰りたい



そう思って夜中に荷物をまとめたこともあった





でも毎回、部屋を出ようとすると思い出したのは母親の言葉




『帰ってきてももう朔の場所はないから』




唇を噛み締めて、ドアすらも開けられず、また勉強漬けの日々を送る